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ゴゴトモヒロがモノゴトの本質を考えるブログ

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TPP

TPPの本当の意義を理解しよう!(農業でも輸出でも、アメリカの陰謀でもなく)

TPP、大筋合意となりましたね。テレビニュースなどでは、農産物が安くなる、しかし国内農家が大きな打撃をうけるといった話ばかりされてますが、この協定の日本経済とっての本当の意義はほとんど理解されていないように思われます。

多少理解ある方でも、東南アジアを含む環太平洋地域において自由貿易体制が確立されることは日本経済にとって有効、みたいな漠然とした感じで、おそらく各国関税が引き下げられるなら日本の輸出産業にとって悪くないだろう、という程度の理解じゃないですかね?

農産物?工業品輸出?いやいや、TPPの日本経済にとっての本当の意義は、「サービス・投資」分野でのルール強化ですよ。もしTPPの日本にとってのメリットは何と思いますか?と聞かれたら、ぜひカッコつけてそう答えてください。

さて、それはどうしてなのか・・・?続きを読む

TPP参加は結局得なのか損なのか? 〜日本の対外通商戦略を考える〜

世の中、TPP参加について、賛成反対それぞれ議論が渦巻いてますが、結局、TPPは日本にとって有益なのかそうでないのか、どうなんでしょうか?いくらニュースを見ていても、さっぱり分からないので、ちょっとゴゴなりに考えてみました。

結論からいえば、TPPという枠組み自体に損も得もなく、結局は日本が今後の対外通商戦略で何を得たいか、次第であると考えます。逆に言えば、なぜTPPへの参加交渉に進むべきなのか?について明確に納得できる説明がないのは、つまるところ、日本に明確な通商交渉戦略が無いせいであると考えます。

そもそもTPPというのは、自由貿易化交渉の一環であって、関税の引き下げや、関税以外で外国企業が相手国マーケットに参入しようとする時に、国籍だけの問題で差別を受けることを排除するための、「公正な」通商条件の実現を目的とする交渉です。なので、本来その取り決め自体に、誰が得して誰が損する、みたいな一方的な陰謀論はあまり入り込む余地はありません。TPPによって、国民皆保険制度が崩壊するなんてのも、詳細な理屈は知らないものの、自由貿易化交渉の概念からすれば、飛躍しすぎた妄想論だと考えて間違いないと思います。

では、TPPに参加しても、日本は損をしないと言い切れるか?日本の場合、農業セクターは間違いなく打撃を受けます。では、そのかわりに輸出型製造業が恩恵を受けて、トータルではカバーできるというトレードオフなのか?

この辺から、話が怪しくなります。大体、TPPの話になると、農業がダメージを受けるとか、いや消費者は安く農産品が手に入って得するとか、いやいや経済の柱である輸出産業が得するとか、国内経済視点でのみ議論しています。しかし、本当にそこが論点なのか?というところが、この問題の本質を考える切り口だと思います。結局、海外との収支関係において、日本が今より有利にカネを稼げるかが、最終的に意味ある観点ではないでしょうか。

例えば、農業vs.消費者という視点では、これまで国内農業が関税障壁で守られていた超過利潤が、自由化によって消費者に移転するだけです。もしここで農業保護の為に、農家への個別所得補償をするのであれば、所得移転のプロセスが変わるだけで、実は得るものはありません。

また、個別保障をせずに農業に対する国内産業依存度をさらに低く誘導すれば、相対的に競争力のある分野に人が移動し、交易条件が改善するという理屈もあります。(こういう労働移動にリアリティがあるかについては議論があると思いますが、中長期的には、保護されない農業分野での従事者は減るでしょう。)でも、得られるのがその程度の話なら、農家にとってのダメージとの比較で、あまり納得できるメリットではないように思います。

輸出型製造業に関して見れば、相手国関税が引き下げになれば多少のメリットはありますが、主な市場である先進国市場との間では、過去の貿易交渉を経て関税はかなり引き下げられており、これ以上得られるメリットはそれほど大きなものではないですし、そもそも関税障壁以外に、人件費や輸送コストの観点での競争力格差から、製造業は拠点を既に国外に移していて、関税そのものは大したイシューでなかったりします。

では、TPP交渉で日本が本当に攻めるべきポイントは何かと言うことですが、先日のゴゴログ記事で上げたとおり、貿易のみに頼るのではなく、サービスや投資収益がこれからの国際経済政策の柱と考えれば、特許やライセンスの保護強化や日本への観光誘致によるサービス収支の拡大、これからアジア諸国へ拡大していくだろう小売・サービス業が海外ビジネスを進める上での非関税障壁(相手の自国企業のみに有利な規制)の撤廃、そうした企業からの投資リターンの日本への還流の障害になる租税制度の改善、を求めて行くことが攻め筋となるはずです。
 (国際収支から見る経済政策の方向性と財政の未来)
 http://gogotomo.ldblog.jp/archives/25520015.html

つまり、TPPへの参加で 国内がどう変わるのかの視点ではなく、相手国の制度をどう変えれば、日本の収支が拡大するかの視点でモノを考えるべきだと思います。

このあたり、ニュースを見ていても、既存の国内プレーヤーの反対意見が伝えられるのみで、参加することで得られるメリットとというのは、あまり説明されているものを見ません。TPPを一つのツールとして対外通商政策で獲得しに行く国益や、対外的に要求するポイントが、日本には実は明確にはない、ということが背景にあるとゴゴは考えます。

そうした状況で、GDPの1%程度を占めるに過ぎない農業の保護団体の声ばかり大きくとりあげられ、また、TPPにおける外国政府の要望ばかり伝わってくるために、賛成派はアメリカの手先になっている売国奴だといった、低俗な陰謀論も広く流布していたりするわけです。

もう一度言いますが、TPPそのものは、単なる制度的な枠組みであって、それ自体にいいも悪いもありません。アメリカの陰謀のためなんて言う言説は、アメリカからの対日要望への対応に実際に絡んでいた経験からすれば、事実無根であって何の根拠もない、小中学生なみの低レベルな妄想だと言えます。

上でも述べたように、自国の収支の観点から相手国政府に何かを要望することは通商交渉として当然の事ですし、それを受け入れるかは否かは、自国のメリットを考えて是々非々で対応しているわけです。また逆に、日本からも外国政府に対して同じように主張しています。

一方で、単に参加すればメリットがある、乗り遅れるな、と言うのもお花畑な話しです。結局、交渉の中で何を捨てて何を取るのかという戦略がない限り、参加して自動的に得られるメリットなんかないわけです。


結論、TPP参加についてこんなに議論が割れるのは、農業を捨てるかわりに何を得るのかという戦略において、競争力を失っている製造業を保護的に助ける以上の、「まっとうに腹黒い」対外通商戦略がないことに尽きるのだと、ゴゴは思います。そこを置いて、国際的な枠組みに乗り遅れるなという受動的スタンスでは、何も得られません。

どんどんアジア諸国に展開しようとするサービス・小売の海外マーケットに対するアクセスニーズや、コンテンツや特許を海外で使われた場合の対価の回収スキーム、製造業をはじめとした海外進出企業が一度は日本に資金還流させることを目的とした制度を相手国に促す、そのかわりに農産品など一部の関税品目は捨てるといった、「図太い」交渉スタンスとアジェンダ設定が必要です。(ただ、そこから考えれば、今から交渉に参加して、何をどこまで取れるか。。)

そこで言えば経産省も、小売・サービス業の国際展開における課題や、知財保護、海外展開企業の国内資金還流に向けた政策を考える部門に、もっとリソースを当てるべきだとゴゴは考えます。いつまでも、ものづくり国家だなんて幻想は通用しませんし、プレゼンスの低下している製造貿易にTPP交渉の目的をフォーカスしても、より明確な損失を被る国内反対勢力を押し切ることは非常に難しく、結局は後ろ向きな通商戦略の中で、日本の国際経済力が低下していくだけと思います。

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