最近、MOOCs (Massive Open Online Courses:大規模公開オンライン講座の略とのこと、今回調べて知りました。。)とか、ネット技術の発展により、色んな知識がパソコンひとつで学べるようサービスが急速に発展してきています。

そうした流れに合わせて、「ITを使った学習の方が効率的だ。もうこれからは学校に行かなくてもいい時代になる!」みたいな意見もちらほら見られます。

ゴゴ自身、まあそうかもね、なんて思うところもあったのですが、先日、たまたまとあるシンポジウムに参加したことをきっかけに、「未来の学校」についての明確なビジョンが見えました。

で、個人的な結論としては、ネット動画で学校がいらなくなるなんて時代は来ない、むしろまた、「良い大学へ行く」ことが求められる時代になると考えるに至りました。


これまでの学校というのは、基本的に知識を伝えるための装置でした。シンポジウムの分科会でプレゼンしたOlin CollegeのChachra教授は、空のバケツに水を注ぎこむイラストでその様を表現していましたが、まさにそんな感じですね。

ところでこのOlin College、今回ゴゴは初めて知ったのですが、2006年に初めての卒業生を送り出した非常に新しい工科の単科大学にも関わらず、先進的な教育プログラムで非常に高い評価を得ています。

特徴はいろいろあるのですが、エンジニア育成を目的としながら、デザインアプローチと人文科学における人間的価値の理解を重視したカリキュラムになっていること、それから、企業や社会における実際の課題解決にチームで1年に渡って取り組みながら、学生が自律的に必要な知識を習得していくという教育法を用いている点が非常にユニークであり、示唆に富むものと思います。

つまり、「バケツに水を注ぐ」ような授業で知識を溜め込むことがゴールではなく、実際の問題を解決するために、自分が知らない知識の習得を含めて、「知識を活用できるようになる」ことがゴールに置かれています。ここに、これからの大学の在り方が示されているとゴゴは思います。

まさにMOOCsなど、インターネットの発展で知識を得ることは、非常に簡単になってきています。しかし、単に知識を得れば役に立つのかと言えば、「有名大学卒だけど使えない」という声が昨今チラホラ聞かれる現状を考えれば答えは明白でしょう。

そう考えると、MOOCsというのは、教育へのアクセスという点ではイノベーティブですが、教育法という点では「バケツに水」の旧来的な教育を効率化するだけであると言えます。

とすると、教育におけるより大きな文脈でのイノベーションのテーマは、MOOCsを土台としつつ、学生が知識を現実に有効活用できるようになるための新たな教育プログラムの開発というところにあると思います。
(なので、MOOCsに意味がないと言ってるワケではなく、新たな教育法との補完関係のなかでこそ、その意義が真に発揮されると思います。)

そのために、これからの時代、大学という機関は、学生が取り組める課題テーマを提供し、そこに取り組むチームが集まるハブとなり、自律的な学習を促しながらも知識が偏り過ぎたり、うまく既存の知識にたどり着けない時には手助けをする、そういう役割・場になっていくでしょう。

そして、こうした観点での教育プログラムのデザイン力やコーディネート力の優劣によって、大学間での新たな競争が行われ、その中で「良い大学」で学ぶことが、未来においても社会的成功への一つの道標であることは変わらないだろう、という見方が冒頭の結論の理由です。


タイトルで「未来の〜」とは謳っていますが、この変化は既にいま起こっている変化です。これから大学を選ぼうとする若い人や親御さんは、旧来的な学校ブランドや「ITによる教育革命」の表面的な変化に惑わされることなく、Olinのように「知識を活かす」ことに真剣に取り組む「未来の良い大学」を目指していくことをオススメします。

そして、日本にいち早くそうしたプログラムを提供する大学が増えていくことを期待しています!