前回の記事、「震災と国際収支と円安と」について、そうした状況にどう対処すれば良いのかといったコメントをいただきました。 これについては、政策と言えるレベルの答えをゴゴは持っていないのと、結論はまあ悲観的なので、もともとは書こうと思ってなかったのですが、政策を考える切り口くらいははいくつかあるので、それだけまとめておきます。

まず、貿易収支の悪化に対しては、原発停止によるエネルギー原料の輸入増加が影響しているので、原発運転の再開が一つの方策です。ここにアレルギーを感じる人は多いと思いますが、そもそも、止めてようと動かしてようと、大地震が直撃して核燃料が露出すれば同じ話しじゃないでしょうか?(あるいは、運転停止なら被害は小さくなるんだろうか?詳しい人、おしえて!)

どのみち現状では廃炉までに長い年月がかかるのだから、廃炉/核処理技術の確立までは動かしておいて、その間に代替エネルギーの開発も進めていくといった、長期スパンで現実的な路線を取ることが、国際収支の観点のみならず、「脱原発」を目指す観点においても必要だと思います。

その上でですが、前回書いた通り、日本の製造業の競争力が周辺国の成長に伴って低下していくのはある程度仕方ないと割り切って、貿易収支以外での稼ぎ力を付けるという切り口があります。具体的にどうする?のアイディアはないのですが、観光政策による海外からの旅行者の拡大や、知財政策による特許料ほかのライセンス料の受け取りの拡大、そして我が国の国際租税政策による海外資金の還流(所得収支)のさらなる拡大、といった方向性は考えられます。 

これは別に製造業がいらないと言っているのではなく、貿易収支の稼ぎ力の低下に応じて、他の収支の稼ぎ力をバランスアップさせ、トータルに経常収支の改善を図っていけないか、ということです。

あと、少し違う角度ですが、海外からの投資呼び込みによっても、対外的なファイナンス・ポジションを高く維持することが可能です。ただ、証券投資は足が早くて頼りにならないので、海外企業の日本進出に伴う投資である「対日直接投資」を促進する、という方針があります。

ここには、「ハゲタカ」などと嫌われる海外からのM&A投資も入ります。短期収益目線での乱暴な経営をするなら批判されても仕方ないですが、外資というだけで毛嫌いするのはナンセンスというか、国際収支観点では、日本にとってマイナスです。地道に日本に根付いてる外資系企業のことも忘れないでくださいね。(かつての対日投資促進担当としてのお願いです。Invest Japan! )

こうした各種方針を統合して政策の立案・運営を行い、国際収支の悪化による国債の国内消化力の低下(海外依存度の上昇)を抑えることが、長期金利の急上昇による財政破綻を避けるための基礎条件だと、ゴゴは考えます。
(ちなみに、外貨準備が高い水準であるということは、イコール円高圧力を受けることなので、この方針をとるとなると、政治的な問題などではなく、理屈的・結果的に円安路線とは相容れません 。)


じゃあ上記の条件が揃えば財政赤字問題が片付くかと言えば、こちらは、まだまださらにハードル高いです。なぜなら、少子高齢化による経済活力の低下と社会福祉負担の増大で、基本的には財政悪化トレンドは続いていくからです。  しかも、国債の国内消化状況が維持できている場合、金利上昇が抑えられるので、財政に対する危険シグナルがなかなか目に見えないので、財政改善に向けたモメンタムが働きにくい状況も続きます。

正直、財政赤字の増大は、どうすれば解決しうるのか、ゴゴもまったく見当つきません。財政を絞りすぎると景気は悪くなる、かといって円安誘導含めて、何かやると財政リスクが高まる。。。増税余地もしっかり政治的にアピールしながら、国債価格の下落(金利の上昇)をなんとか抑え込み、財政と経済を両手に、非常に長い綱渡りのような超ナローパスを歩み続けて、何十年もかけて財政収支を改善していくしかないと思われます。

そして、綱渡りのあいだには、医療費や生活保護といった福祉水準も切り下げていかざるを得ないでしょうし、結果として日本はかなりギスギスした、厳しい社会状態を迎えることを覚悟しないといけないと思います。しかも、そうした努力を重ねても、その間に何らかの大きな経済ショックが起これば、綱から転落するかもしれません。


こんなことを言うと冷淡だと非難されるかもしれませんが、このような状況下で、個人が国のことなんか心配しても仕方ないとゴゴは思ってます。いかにして、まずは自分と家族、そして可能な範囲で周囲の幸せに貢献できるか、そういう「手に届くチャレンジ」 を個々に重ねていくしかないというのが、ぶっちゃけのゴゴの考えです。