話題の特定秘密保護法、「知る権利」をはじめとした基本的人権が侵害される!みたいなハナシもありますが、さて皆さんどうお考えでしょう?ちゃんと確認するには法案を読めばいいのですが、なんとなくカベが高そうで、法案をわざわざ確認しようとする人は、かなり少ないんじゃないでしょうか?

というわけで、超シンプルな法律一般の読み解き方をお教えします。では、さっそく特定秘密保護法をサンプルに、法文全文を見てみましょう。特定秘密保護法案は全27条の、法律としては割とシンプル条文です。

特定秘密保護法の全文(朝日新聞デジタル)
 ※特定秘密保護法に対する反対の大論陣を張っていた朝日新聞社がソースなので、反対論者も安心ですね!

おっと、開いていきなりアタマから読みこなそうとしてはいけません!
まず、法律というのは、最初に総則があって、「法律の目的」と、「この法律文章で使われるコトバの定義」が示されています。 ここはここで大切なのですが、ゴゴ流のおススメは、最後の方に記載されている「罰則」をまず確認することです。(法律によっては、罰則がないものもあります。いわゆるひとつのザル法です。)

特定秘密保護法の罰則は、第七章・第23条~27条の4条だけです。抜粋してみます。

第二十三条 特定秘密の取扱いの業務に従事する者がその業務により知得した特定秘密を漏らしたときは、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。特定秘密の取扱いの業務に従事しなくなった後においても、同様とする。

2 第四条第五項、第九条、第十条又は第十八条第四項後段の規定により提供された特定秘密について、当該提供の目的である業務により当該特定秘密を知得した者がこれを漏らしたときは、五年以下の懲役に処し、又は情状により五年以下の懲役及び五百万円以下の罰金に処する。第十条第一項第一号ロに規定する場合において提示された特定秘密について、当該特定秘密の提示を受けた者がこれを漏らしたときも、同様とする。

(3~5 省略)

第二十四条 外国の利益若しくは自己の不正の利益を図り、又は我が国の安全若しくは国民の生命若しくは身体を害すべき用途に供する目的で、人を欺き、人に暴行を加え、若しくは人を脅迫する行為により、又は財物の窃取若しくは損壊、施設への侵入、有線電気通信の傍受、
行為(不正アクセス行為の禁止等に関する法律(平成十一年法律第百二十八号)第二条第四項に規定する不正アクセス行為をいう。)その他の特定秘密を保有する者の管理を害する行為により、特定秘密を取得した者は、十年以下の懲役に処し、又は情状により十年以下の懲役及び千万円以下の罰金に処する。

(2・3略)

第二十五条 第二十三条第一項又は前条第一項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、五年以下の懲役に処する。

2 第二十三条第二項に規定する行為の遂行を共謀し、教唆し、又は煽動した者は、三年以下の懲役に処する。

第二十六条 第二十三条第三項若しくは第二十四条第二項の罪を犯した者又は前条の罪を犯した者のうち第二十三条第一項若しくは第二項若しくは第二十四条第一項に規定する行為の遂行を共謀したものが自首したときは、その刑を軽減し、又は免除する。

第二十七条 第二十三条の罪は、日本国外において同条の罪を犯した者にも適用する。

さて、いかがでしょう?法文としてのコトバの固さはどうしても残りますが、罰則の対象は、
・特定業務の取扱業務に従事する者(23条)
・法文上の一定の規定により業務上、特定秘密を提供された者(23条)
・外国のスパイ(24条)
・その他、上記の共犯者・教唆者(25条)
だけです。(26条は自首した場合の刑の軽減、27条は国外にいて違反する者への適用についてです。)

更に、罰則の手前の雑則においては、

第二十二条 この法律の適用に当たっては、これを拡張して解釈して、国民の基本的人権を不当に侵害するようなことがあってはならず、国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。

2 出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。

とまで念入りに書いてくれています。

さあ、これだけ見れば、もういいですよね?特定秘密法案について、いろいろと「文化人」が言っていることが、いかに荒唐無稽で法律の中身をよく理解しないまま叫んでいるものかがお分かりになるかと思います。

(しかも、仮に現時点で予想しえなかった憲法に違反するような法律運用があれば、この法律を「違憲無効」として争うこともできるので、こんな法律ごときで国民の基本的人権が回復不可能なほどに侵害されることはありません。それこそ、彼らも大切だと叫ぶ日本国憲法の有効性を、自ら疑っているようなものです。ちなみに、自分が活動家の立場なら、「秘密保護法案が底抜けに悪用されることのないよう、憲法改正にはより慎重になるべき」という、次の一手を打ちますケド。笑)


というわけで、法律がどんな影響を及ぼしうるのかを知りたければ、まずはさくっと「罰則」の章を見れば結構わかるものです。そこから、細かい定義やら「第○○条で規定する~」なんてのが、いったい何なのかが気になるのであれば、条文の並びを気にせずに、関係部分を拾い読みすればいいのです。全文を読み通さなくても、大体どんな法律で、どんな影響を及ぼし得るかをつかむことができます。

さあこれで、「ほにゃらら法は国の陰謀だ!」みたいな世迷い事に惑わされることはありません。ぜひ、気になる法律があれば、サクサク「罰則」を確認してみてください!


P.S.
法律の途中には、行政機関が行うべき手続の話など、「中の人」にしか関係ないところも結構あるので、普通はそんなところを知る必要はありません。「何をすれば罰せられるのか?してはいけないのか?」ということだけ理解すれば、ある意味十分と言えます。

ちなみに、細かく定義などを追っていく方には、「『政令で定めるところにより~』とか書いてて詳細が良くわからん!」という疑問が出てくるかもしれません。法令というのは実は、法律>政令>省令>規定等といった重層構造で出来上がっているためなのですが、その話はまたいずれ。