この週末、ちょいと考えさせられる機会があり、久々にまた教育関連ネタです。

ここ数年来、キャリア教育の必要性がよく議論され、中学生での職業体験なども一般的になっています。最近では、高校生や中学生のうちから、将来何になりたいかを決めて進路の選択をするのが良い、といった風潮もあるようです。

しかし、ここまで行くとさすがに行き過ぎじゃないの?とゴゴは思っています。そもそも、もう少しで40歳に届かんとする自分自身、「あなたはこの先、何になりたいですか?」って聞かれても、未だ答えなんかありません。もちろん、明確なキャリア目標があって、そこに向けて努力できるなら、それに越したことはないでしょうが、ほとんどのオトナも、そんなもの、はっきりいってない人が大多数でしょう。それを中高生に求めるのはいかがなもんでしょう?

そもそも、キャリア教育に目が向けられるようになったのは、村上龍氏による「13歳のハローワーク」あたりからだと思いますが、氏のもともとの問題意識は、当時の教育行政の方針において、教育とはいかに「良き人間」を育てるか(全人的教育)に主眼が置かれ、本来あるべき「社会において活躍できる能力(人間性も含め)の育成」という観点が置き去りにされていたこと、そうした結果、ニートや引きこもりのような存在が増えてきたことへのアンチテーゼであったと推測します。

つまり、「学びの先には、いずれ世の中に出て何らかの役割を持つのだよ、いま君たちはそこへの準備期間なんだ」ということを伝えるのが主目的であり、何になるのかを早くから決めさせることは本意ではなかったと思うのですが、何か表層的な活動へと、最近のキャリア教育が流れているのではないかと心配しています。

こうしたキャリア教育の弊害として考えられるのは、逆に学ぶことと働くことの関係を歪めるのではないか、ということです。世の中に出て働くのに、数学や哲学なんて使わない、英語や会計を勉強した方が、実学的で役に立つ、という流れを加速するのではないかと思いますが、これこそ「人材亡国」への道だとゴゴは考えます。

近頃、教育論のもうひとつのテーマとして、グローバルで活躍できる人材の育成が謳われていますが、国の内外に関わらず、本当に有能な人材というは、現状に対して「なぜ、どうして?」という視点を持って自ら問いを作り出し、それまで誰も認識していなかった問題を解くことで、新しい価値を生む人です。

それは、イノベーションというものから日々の改善までレベルは色々ありますが、高い視点での問題意識・問いを立てる能力というのは、英語や会計といったハードスキルだけを学んでも身につきません。そして、本来こうした「自ら問いを立てる能力」こそ、高等教育において身につけさせるものだと、ゴゴは考えています。

なので、高校から大学への進路選択においては、自分が興味をもって「なぜ、どうして」を追いかけられそうな分野を選びさえすれば、将来何になりたいかは、ぶっちゃけ無くてもいいとも思います。本当に面白ければ研究者になる道もありますし、全く別の職業に就こうとも、情熱的かつ論理的に「なぜ、どうして」をできる人は、たいていどこに行っても重宝がられ、活躍します。

(ちなみに、役所時代も今の会社でも、新卒採用面接の時は、その人が何に対して、なぜ問題意識をもっているのかをいつも聞いてます。問題意識のありようで、その人の深さが分かるというのが、ゴゴなりの人の見たて方です。些細なことでも、その人が本当に問題意識をもって自分のアタマで考えていることは、一見大きなテーマだけれども、新聞で知ってるだけのような話しとは比べものにならない深みがあるものです。)

「学ぶ」と「働く」は、それが完全に切れていてもダメですが、あまり短絡的につなげようとするのも結局逆効果で、以前の記事で書いたように、大学では、モノゴトをきちんと考える土台となる、真の教養をしっかり身につけて欲しい、それが本当に良い職業人生や国際的視点での人材育成につながるんじゃないの?というのがゴゴの考えです。

というわけで、将来の職業を考えることが、「主体的な問い立て」へと導びく一つのキッカケとなれば、キャリア教育としての効果は十分だと思います。それを、無理にでも何になるかの目標を決めて、そこに向けて一直線に頑張るのだ、というアソビのない人生観を植え付けるようなことはないよう、関係者の方には気をつけていただきたい、というのが今回の結論です。

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さて、ここからは付け足しの話しですが、上記のような観点での高等教育の内容発展や、高校生が大学・学部の名前や中途半端なイメージではなく、本当に興味をもって学べる先への進路選択をいかにサポートしていくのか、いまゴゴがかかわっている事業が向き合うべき社会課題だな、と強く感じる次第です。

どうやって解決するものか。。。?ヒントをお持ちの方、アイディアくださいませ。