ゴゴログ

ゴゴトモヒロがモノゴトの本質を考えるブログ

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保育園

「待機児童問題」にこれ以上税金突っ込むのはどうなんやろね?という話

ごぶさたのゴゴログです。

「日本死ね」ブログの影響で保育園問題が沸いとるようですね。まあウチも子どもが小さいしカミさんも働いてるので事情も気持ちもよく分かりますが、デモなどに対する情緒的な賛同の風潮を見ると、認識の甘さ浅さをつい感じてしまいます。

保育園が見つからないことや保育士の給与水準そのものについては確かに問題だと思いますし、実際ゴゴログ当初の記事(http://gogotomo.ldblog.jp/archives/24992853.html)で、マーケットメカニズムに任せて需要を満たす制度的解決策をすでに書いてますんで、本当にやっていただければとずっと思っとります。

ただ、やっとこさ一連の騒動で保育コストの話しも出てきてますが、保育士にそれなりの給料出す前提で素に保育料払ったら平均で10万円くらいは上がるんじゃないですかね。
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保育園にこそバウチャーを ~健全な民営化議論~ (その3・完)

保育園シリーズ、第3回目です。前回、行政措置としての保育園制度と、それによる認可・認証・無認可の保育園の間の補助の違いと運営格差が、待機児童を生みだしているとの考察をしました。今回は、こうしたらええんちゃの?という、ゴゴログ的な本質的解決策を考えます。

まず、制度を考える前提条件として、
1. 子どもの保育環境を健全な水準に保つため、全ての施設に一律に適用される、一定の保育基準が必要

2. それなりの基準を満たすためには、適正な賃金水準での人件費その他で、子ども1人あたりの保育コストも結構かかる(月15〜30万円?)

3. 利用者側のニーズに応じて柔軟に保育園の選択ができるようにしながらも、家庭間の経済力の違いが有利・不利にならない制度が必要

4. 保育園の運営側にも、サービスの供給拡大のインセンティブが働く程度に、それなりの収益が見込めることが必要

と置きます。

さて、どうしたら、全ての前提を満たした制度設計ができるでしょうか?まず、1と4の前提から考えると、保育園運営では、「一定のサービス基準」は規制としつつ、「料金設定は自由」と導けます。

しかしそうすると、現実問題として、2の前提条件とぶつかります。誰が今よりも高い保育料を払えるのか?ということです。

当然、ここで補助金の分配の問題となるのですが、まず、現状では認可に補助が偏っていますから、これをいったんやめて、公立・民間に関わらない補助制度を考えましょう。その場合、各施設に、子どもの定員数に応じて一定額をバラまけばいいのでしょうか?そうすると、今度は3.の問題とぶつかります。

柔軟なサービス選択ということは、人気のある園、そうでない園がどうしても出てきます。なのに同じ補助額で良いのか?

そう考えると、保護者側にバウチャーを渡して、補助金の配分をマーケットの中で調整するようにするのが一番ではないでしょうか。ただし、このバウチャーは、設計上もう一工夫必要です。また3.の前提に関わりますが、家庭によって経済力が違うので、一定額のバウチャーでは子どもにとって不公平です。

というわけで、
・「保育に欠ける」か否かの審査を行政が行なう(公的補助の必要があるか否かのみ判断。まあ、昼間に親が働いていて面倒見れないなら基準クリア、程度のもの)
・保育に欠けると認定された場合、 収入基準に応じた割引率が設定されたバウチャーが発行される
・親は、サービス内容と自己負担額に応じて保育園を選択し、園は割引分の補助金を受け取る。
という設計にすれば、経済力に応じた負担という思想は守りつつ、とはいえある程度は経済力に応じて、どの保育園を選ぶかのニーズを分散させる、という状況を導き出せるはずです。

結果、待機児童もなくなれば、保育園の側も現実的にやっていける料金設定ができ、保育士の待遇もあげられるのではないでしょうか?

こうなると、そもそも公立・私立という色分けに差はなく、例え市が運営していようと、民営化されていることと変わりありません。(財政負担と競争環境維持のため、今回述べた制度を運用するなら、特段の理由なく公立のみに補助を足すのはNGです。)

なので、「バウチャー制度を伴う保育園の民営化」が、現状の保育園問題を解決するための本質的な方策とゴゴは考えます。今の予算の組み換えだけの場合、どれくらいバウチャーで渡せて、自己負担額がどうなるのかまでは試算はできていませんが(多分、保育園側の収支改善の分、平均的には今より負担アップでしょう)、認可に入れたら数万円、もれたら認可外で下手したら10ウン万円、なんて不公平はなくなるでしょう。

これやったら、本当に問題解決すると思うのですけど、いかがでしょう?悪くないようなら、担いでくれる議員さん探してみたく思います。

保育園にこそバウチャーを ~健全な民営化議論~ (その2)

保育園制度にまつわる問題の本質を探るテーマの2回目です。

前回、 保育園というのは、基本的に公共サービスとして行われているのではなく、「保育に欠ける子」を、個人に変わって行政が保育する「行政措置」なのだ、という話をしました。その結果、現代社会の、主に働く女性のニーズにあわない制度・運営になっている、ということなのですが、まずは、保育園というのは、どのように運営されているのでしょうか・・・?


まず、「認可」「無認可」なんてよく聞きますが、「認可」保育園が、行政措置として行われているものです。それ以外は、基本的に「認可外」となるのですが、東京都は独自に、現代ニーズに合った公共サービスの考え方に基づいて、「認証保育園」という制度を運用しています。

具体的な違いはさておき、ここでは認可・認証(東京都)・その他無認可という違いがあるのだ、ということだけ頭に入れておいてもらえればOKです。
 ※参考:認可と認証の違い (とうきょう福祉ナビゲーションのページ) 

で、認可・認証・その他無認可の保育園の運営は、どうなっているのか?基本的に、認可に補助が手厚く、無認可は補助とか無いんだろうと予測はしていましたが、実情わからないので、グーグル先生にお願いしたら・・・個人の方のブログですが、いいものがありましたので、勝手ながら少し抜粋して引用させていただきます。
 ・ 認可・認証・無認可保育園のそれぞれの保育料と運営費について(保育園運営に関わるの方のブログ)   

例)零歳児を9人預かる場合

認可保育園
・運営費 3300万 人件費 2650万
・職員数 保育士3人 看護師 栄養士 調理師 嘱託医
・保育士年収 500万計算
・月額保育料 305,000円
(現在は1~2割負担:約3〜6万円)

認証保育所
・運営費 1700万 人件費 1350万
・職員数 保育従事職員3人 調理師 嘱託医
・保育士従事職員年収 300万計算
・月額保育料 156,000円
(現在は3~4割負担:約5〜6万円)

無認可保育所
・運営費 1080万 人件費 860万
・職員数 職員2人
・職員年収 300万計算
・月額保育料 100,000円

(以上、抜粋引用)

これ、見てどう思いました?まず、人手のかかる0歳時の例ではあるものの、認可レベルで保育しようとすると、実額コストで30万円かかる、ということに驚きです。そこまでのサービスレベルが必要なのか?という議論はあるかもしれませんが、いずれにしても保育にはカネがかかる、といことです。

さて、ここからが問題の本質なのですが、上記の比較をあらためて見ると、職員の数や、前提年収から推定する職員の質、あと、ここでは出てきませんが、園庭の広さほかの施設の充実ぶりなど、 保育サービスが充実しているほど、個人の利用負担額は低い、という逆転現象がおこっています。
(個人の事業者では、無認可でも善意で頑張っているところも沢山あると思いますが、一般論としては、やはり差が出るものだと思います。)

ここに、待機児童を生みだす構造があります。だれしも、安い上に質もよいなら、そっちがいいですよね。だから、ママさん方は認可保育園に待機するのです。そして、これは認可外の事業者側にも問題を引き起こしています。

「競合」の認可保育園の方が、安くて人気がある、自分のところは補助もない/少ないので、いくらおカネがかかるといっても、あまりに高い保育料では誰も来てくれなくなるから、料金の限界がある。(しかも認証保育園は月額利用料の上限あり。) なので、経営も成り立ちにくいし、当然保育士の給料だって、たいして払えない・・・

こんな業界に参入してくる事業者や、定着して働いてくれる人材は、そうはいないでしょう。結果、認可外でもサービス供給量や人材が不足します。すると今度はそれがまた巡って、ママさん方にとっても、認可をあきらめて認証にしようにもそう選べる園もない、下手すると認証も順番待ち、入れてもどこか不満で認可の待機を続ける、ということに状況を生みだし、より待機児童問題が深刻になるのです。

これこそ、「行政措置」として保育園制度を運用していることの問題です。措置として行なう認可保育園の運営に財政リソースが偏っており、利用者のニーズに応じた適切なリソース配分が妨げられている結果、需要と供給をうまくマッチングさせたりバランスさせるメカニズムが働いていない構造である、と言えます。

じゃあどうすればいいのか?というところですが、そこは次回最終回にて。

(その3を読む→)

保育園にこそバウチャーを ~健全な民営化議論 ~ (その1)

ゴゴログ、今回は保育園問題について考えます。待機児童やら保育士の待遇の低さやら、問題アレコレ山積みの保育園制度ですが、いったい何が問題の本質なのか?

ちなみに、ウチでも2年前、保育園探しに苦労しました。認可保育園に申し込むも、共働きなりの世帯収入があるために順位低く入れず、結局カミさんの復職ギリギリのとこで認証の空きが見つかり、てな感じでした。まあそれでも、近くの便利な場所に入れただけでもラッキーなんでしょう。

しかし、「ちょ、おま、こっちはそれなりに税金納めとんのにどういうことやねん?だったらカネ返せよ!!」なんて、心底怒りを感じました。ずっと待ってる人なんて、その比じゃないでしょうね。

という訳で、収入に応じた負担はあってもいいのですが、審査基準に世帯収入の多寡があるために、税金支払いで貢献してるほど、保育サービスが受けにくくなるという、逆差別的な仕組みになっている訳です。なんでそんなイミ分からんことになっているのか?


これはそもそも、保育行政が、「保育に欠ける子どもの保護・養育のために行政として認める措置」であることに端を発しています。「措置」なんです。何です、それ?

措置って、字ヅラからして、いかめしくて融通きかなさそうでしょ?そのとおりです。これは市バスなどのような単なる公共サービスではなく、「社会的な観点から必要と認められる場合に限って、行政が個人にかわって必要な行為をしてあげる」という、家父長的国家観に基づく考え方で制度設計がされています。自分では適切な判断ができない精神病患者を、必要と判断された場合に本人の意思と関係なく無理矢理でも入院させることを「措置入院」といいますが、保育もそういう「措置」なんです、現状は。

もはや、この出発点からして、現代社会のニーズからズレています。措置としての保育が残る部分があってしかるべきですが、今、圧倒的に求められているのは、サービスとしての保育です。この、そもそもの価値観のズレが、話が噛み合わないことの根本要因です。



では、行政措置として行われているがゆえに、保育園は現状どう制度運営されているか、そしてそれを、保育の質は担保しながら、働く女性を支えるための公共「サービス」として機能させるためにはどうすればよいのか、考えていきたいと思います。

(その2を読む→)

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