発端はこの記事である。

・経産省、電動アシスト付き大型幼児車は「車道を通行すること」と発表(国沢光宏)
https://m.newspicks.com/news/2490206/
(早速に残念ながら、この後説明するように、恐らく「誤解で炎上させた」ということで記事は削除されてしまってます。ので、ログ程度で不本意ながらNewspicksのコメントページにリンク張っとく。)


元記事はもう確認できないわけですが、電動アシストの大型ベビーカーは車道を走れと経産省が判断した!バカじゃねーの?(意訳)まあそんな内容でございました。


この記事がツイッターで回ってきたときには、「次官若手プロジェクトとかで意識高い事言ってるのに幼児を車道に晒すのかよw」的な燃度高めの素晴らしい煽りコメントも見かけたわけですが、ゴゴ的には「グレーゾーン照会で経産省が事業者の代わりに確認しただけで判断したのはリリースにある通り国家公安委員会・国土交通省だろ。わかってねーな w」とまあマニアックな嘲笑案件程度に嗜んでおりました。



※ちなみにグレーゾーン照会(グレーゾーン解消制度)というのは、新しい商品やサービスが法令に適合しているかを事業者に代わって経産省が関係省庁に聞いてくれるという取り組みであります。事業者が直接確認するとなると規制関係で遠慮したり法令の細かい部分の確認をスムーズに行うことが難しかったりということがあるので、経産省が間に入って確認してあげますよ、というものでございます。このあたり色々お世話になってるのでPR.。

・企業実証特例制度・グレーゾーン解消制度
http://www.meti.go.jp/policy/jigyou_saisei/kyousouryoku_kyouka/shinjigyo-kaitakuseidosuishin/

とはいえ、保育園児やら移動させてるアレ、調べたら「避難車」または「お散歩カー」(かわいいw)というのが一般的通称のようですが、一定基準超えてるからって車道走れってのはいまいちセンス悪いなというところはあり、冒頭の記事について経産省を批判するのはスジ違いとはいえ問題意識はまあ分かる、と思っておりました。


ところがですよ。一夜明けたら、あれは誤解でした、真相はこうだった的なまとめ記事が。

【注意】多くの人が勘違い! 保育園の電動アシスト付き大型幼児車の問題 真相はこういうことです
https://matome.naver.jp/odai/2150523529300428401


内容的には、すべての電動アシスト付き「お散歩カー」のことではなく、真相はあくまでも照会のあった個別製品の話しである、ほかのものは関係ない、みたいな話で一件落着。。

。。あのなあ、素人が中途半端なまとめで勝手に鎮火させてんじゃねーよ。大体経産省が判断主体じゃないこともわかっとらんやろオマエ。


まあ経産省側も急に炎上して、これはあくまでも個別の照会にかかる回答、みたいな逃げ方したようなのでライター氏の責任ばかりではないわけでですが、これじゃ問題の本質があいまいになったまま終わってまうがな。ってレベルの内容を「真相はこういうことです」とかドヤ顔風に言われるとさすがにイラっとくるわけです。


さてと、もうここまでで書いてる方もお腹いっぱいな感じになってきたわけですが、実はメインディッシュはここからでございます。


そもそも今回紹介があった「お散歩カー」が軽車両とされ、ならば車道を走るべき、となったのか?引用した記事でも触れられてましたが、2015年に同じくグレーゾーン照会された案件が判断の下敷きになってます。
http://www.meti.go.jp/press/2014/01/20150128001/20150128001.pdf

で、同じ話を警察庁の告示として出したのがこちら。(条件がより詳細)
https://www.npa.go.jp/pdc/notification/koutuu/kouki/kouki20150127.pdf

要件を抜粋するとこんな感じ。

駆動補助機付乳母車のうち次に掲げる要件を備えたものについては、法第2 条第3項第1号にいう「小児用の車」として取り扱うこととする。 
(1) 車体の大きさが次に掲げる長さ、幅及び高さを超えないこと 長さ 120センチメートル 幅 70センチメートル 高さ 109センチメートル
(2) 原動機を用いない乳母車と同様の使い方を想定したものであり、かつ乳 児等を載せるための機能を有するもの 
(3) 原動機として、電動機を用いること 
(4) 最高速度が6キロメートル毎時を超えないこと
(5) 鋭利な突出物がないこと 
(6) ハンドル等から手を離した際には原動機が停止すること 
なお、上記の条件に反する小児用の車であって原動機を用いるものは、自動車又は原動機付自転車と解されるので留意されたい。




あらためて本件の論点を整理すると、今回の電動「お散歩カー」は、「小児用の車」として歩道を通行してよいか?というのが焦点。上記の要件に照らしてみると、引っかかるところがあれば自動車または原動機付自転車(いわゆる原付)と解され、車道走行はもちろん運転免許も求められるわけです。

ところが、今回のグレーゾーン照会の結果は、「軽車両」。
http://www.meti.go.jp/press/2017/09/20170907003/20170907003.html

ということは、電動アシスト部分については「原動機」とはせずあくまでも人力を補助するものと判断したということであり、ひっかかったのは要件(1)にある「大きさ」ということだと思われます。

とすれば電動アシストではない普通の「お散歩カー」も大きさによっては軽車両に該当する、と整理するのが論理的解釈ですわな。電動アシスト機能があるとはいえ原動機付ではない「お散歩カー」を、電動アシスト機能を持たない一般的な手押し型と区別するような明確な規定も理屈もないですから。

さて、では「長さ 120センチメートル 幅 70センチメートル 高さ 109センチメートル」を超える「お散歩カー」は例外的と言えるのか・・?

調べたら、「完成寸法 横(=長さ)123cm×幅78cm×高107cm」みたいなのが普通に売ってました。。 
http://akachantown.biz/shopbrand/061/019/Y/




ってことは、正面から警察に確認したら普通に使われてる「お散歩カー」も車道を通行する必要があるのでは?「お散歩カー」に危機迫る!


なーんてことを考えてたら、NHKの報道追記にて、警察が電動アシストではない普通の手押し「お散歩カー」についての見解を広報したとのこと。

手押しのものは大きさに関わらず、すべて「歩行者」と同じ扱いとなり、歩道を通行できるというものです。


http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170913/k10011138051000.html


これで一件落着!・・になるかよ、このハゲーーーっ!!炎上回避で根拠レスに逃げてんじゃねーよ。そしたらなんで電動アシスト付きのだけが大きさによって軽車両にされるんだよ?理由言ってみろよ?

そんで記事書く方もそれくらいつっこめよ、などと思ったてらまた残念なお知らせが。。

・大型ベビーカーの解釈を警察庁がNHKに回答。全て決着(国沢光宏) 
https://news.yahoo.co.jp/byline/kunisawamitsuhiro/20170914-00075750/

最初に火をつけて誤解批判されたらしれっと記事削除してどっかいったと思ってたのに、またぞろ出てきて「全て決着」とはご立派ですな。全然決着してませんが。


結局、警察庁告示の大きさ要件は、なんとなく決めただけの要件っつーことですよ。そんな法律上の位置づけも微妙なルールでもって、重い手押し車で苦労している保育士さんの助けになる電動「お散歩カー」を、「はい幅70cm超え。軽車両。車道走れ。」って結論で本当に合理的だと思います?


あるいは、やはり要件で示す以上の大きさでもって歩行者の通行を阻害するというなら、手押し型も電動型も車道行くべし、というのが一貫した行政運営の在り方というもんでしょ。炎上したら面倒だからと口先一つで適法になったり違法になったり、そんないい加減なことでいいんすかね?(ってあたり、経産省側もちゃんと警察詰めて調整しろよと思ったり。)


とまあ、報道する人から所管違いの経産省に文句言う人から行政側まで、関わる人々がことごく本質を外したテキトーな方ばかりで非常に残念でございますね、という話でした。もっとアタマつかって考えろください。


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