先日、最新の将来推計人口が公表され、ニュースになっていました。

2053年、1億人割れ=65年に高齢者4割弱―出生率は小幅改善・厚労省推計

 
日本の人口がいつ1億人を割るかはというのは個人的にはどうでもよくて、高齢者比率のさらなる増加による社会負担の高まりに社会あるいは個人としてどう向き合うのかということが 最近の関心なのですが、今回の公表で気になったのは、「出生率が小幅改善」という点です。

どれどれ?と改めて出生率の推移を確認すると、2005年の1.26を底に、足元の出生率は2013年で1.43とゆるゆる上昇してたんですね。データは見てははずなんですけど、長期で見た時の水準の低さに気を取られてこのトレンド転換についてはあまり考えてませんでした。

しかしながら、あらためて「なぜ出生率が上昇しているのか?」という要因を考えると、何が変化しているのがよくわかりません。

まずはデータの確認ですが、下記のとおり2005年を底にほぼ一貫して上昇傾向です(赤折れ線)。

gzh1-1-01
http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/whitepaper/measures/w-2015/27webgaiyoh/html/gb1_s1-1.html


今回公表の人口研の報告書では2015年までの動向も出ていますが、更に上昇してます。
・日本の将来推計人口(平成29年推計/国立社会保障・人口問題研究所)p.33
 http://www.ipss.go.jp/pp-zenkoku/j/zenkoku2017/pp29_bukai19.pdf


今回の推計前提としての出生率引き上げについて、冒頭紹介の記事では、「30~40代の女性の結婚や出産が上向いている」ことを要因としています。
1人の女性が生涯に産む子どもの数を示す「合計特殊出生率」は、30~40代女性の結婚や出産が上向いている近年の傾向を踏まえ、小幅ながら改善。60年に1.35とした前回推計(12年)に対し、65年に1.44になると見込んだ。
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170410-00000049-jij-pol

しかし、上記の人口研の報告書のニュアンスは微妙に違っているように感じられます(必ずしも記事が間違っているということではなく、読んだ時の事象のとらえ方感じ方が微妙に異なる、ということです)。報告書P.23に前回の平成24年推計時の仮定数字と現状傾向の説明が書かれていますが、ざっくり一言で趣旨を言えば、「前回の見立てが少し低すぎたので見直した」ということであり、少なくとも少子化の大きな要因とされる生涯未婚率や夫婦の完結出生児数(一組の夫婦が最終的に設ける子供の数)が改善していることを示唆する書きぶりではありません。

とはいえ、10年という長期間で出生率は上がっており、一方で平均出産年齢も上昇しているので、30-40代の女性の「結婚」はわかりませんが(国勢調査からみる年代別未婚率は下がっていないので)、少なくともそのあたりの年代女性の「出産」が増えているのは間違いないでしょう。

では、そうした出生行動の変化の要因・背景は一体何なのか?というところが気になるところなのですが、そのあたりがはっきりしません。


あくまでも概念上の整理として未婚率上昇かつ完結出生児数の減少というトレンドの中で出生率が上昇する要因として考えられることには、
1.晩婚化・晩産化(平均出産年齢の上昇)の落ち着き等による巻き戻し
2.婚姻外での出生の増加
3.日本籍男性と外国籍女性による出生(子供は日本籍)の増加
 といったものがあり得ます。

2.や3.のような結婚観や家族像の多様化による出生率変化であるなら、特に2.に絡んでシングルマザーへの子育て支援をより手厚くするなどの方向での少子化対策が重要と考えられますし、個人的には少子化対策とは別の視点でそうした社会的弱者に対する政策実施を望むところではありますが、実感値としてはこうした「出産ダイバーシティの拡大」が全体の出生率のトレンド変換に寄与するほどのインパクトはないと思います。

 というわけで、出生率の上昇傾向については1.の巻き戻し効果が大きいのだろうなとは思うのですが、とはいえそれだけが要因なのかと問われればイマイチよくわかりません。ただし、某女性アーティストの「羊水が腐る」発言(2008年)をきっかけに(?)、母体の経年による出産可能性低下についての認識がここ数年で急速に広まりそれまでは知らないうちに失われていた出生機会の回復と、そもそもの平均出産年齢上昇の限界化があいまって、近年の出生率上昇に寄与している部分は大きいんじゃないかと思います。

そしてもし実際そうだとすると、少なくともここまでの出生率回復においては「出産に関する正しい知識」の啓蒙が一番効果的であったと言えるわけで、こども手当やら保育所の設置やら財政的支援を行ったからではない、ということをしっかり認識することが重要だと思います。こうした財政負担を伴う子育て支援が不要だとまでは言いませんが、やるのであれば「少子化対策」という耳ざわりのよい名目のもとで効果の伴わない施策に対して税金投入に走ることなく、少子化要因と課題の解像度を上げて政策検討してほしいところです。

ちなみに、晩産化の巻き戻し効果については、各年代層(コーホート)における本来的な完結出生率に回帰しているだけで、長期的に上昇トレンドが続くものではありません。事実、人口研の予測推移をみても今後の出生率についてはほぼ横ばいになっています。 というわけで繰り返しになりますが、まずは近年の出生率上昇の要因分析を政府にはしっかりお願いいしたいところです。

※少子化対策、やるならちゃんと詰めて考えてねということで、本当の思いもう少し別なのですが、それは次の記事で。。


(参考文献)
わが国近年の出生率反転の要因について(金子隆一、2010年)
http://websv.ipss.go.jp/syoushika/bunken/data/pdf/19320501.pdf 



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