新年あけましておめでとうございます。

ネタとしては旬をすぎて今更な感じの話ですが、とはいえ書いておかなければならない個人的関心と事情(PR)がありますのでよろしくお願いします。


昨年炎上したDeNAのwelq問題を巡っては「ベンチャーがグレーゾーンに挑戦して何が悪いのか?」といった声が当初はチラホラと聞かれ、前回記事(リンク)でも色んな意味で直球なコメントを頂きました。

確かに、UBERやAir B&Bのように、 旧来的な規制を飛び越えてイノベーティブで必要とされるサービスを実現しようとするベンチャーは確かに魅力的で、「法令遵守」に縛られた大企業にできないチャレンジをベンチャーこそがやるのだ、という考え方は正直なところ個人的に嫌いではありません。

ただ、DeNAを擁護する声は聞こえなくなってきたとはいえ、「グレーゾーンにチャレンジ」することの意味や意義、境界線をキチンと理解しないまま、ベンチャー界隈の一部においては、法律や制度にチャレンジすること自体が、校舎の窓を叩いて歩く的な反権力的なスタイルとしてカッコよく思う価値観や文化が残っているのではないか?と少々あぶなっかしく感じております。


まず、まっとうなベンチャーとしてグレーゾーンにチャレンジするのであれば、自分たちのやろうとしていることが自社利益を超えて世の中にとって良いことを実現するためにやるのだ、という理念があることは言わずもがなの前提となります。そしてその理念の実現において何らかの法的規制に触れる恐れがある場合、その法律や個別の条文が一体どのような理念、社会的価値を守り実現しようとしているのか?ということを理解することがもっとも重要な第一歩です。

法律が規定する社会的利益は様々で、利用者の安全や経済取引の公正性、また一部には業界保護的な参入・供給規制なども残っていたりします。そしてその規制の仕方も、十分に合理性のあるものから現在の技術水準に照らして時代遅れであったり、具体的行為に関する規制やその運用が細かすぎるものもあります。

そこで、自分たちの実現しようとする理念と、規制が守ろうとしている理念や価値を相対的に客観視して、互いにぶつかったらどちらが世の中から理解を得られそうかを考えるのが、規制のグレーゾーンに直面した時の対応の基本となります。(その意味でwelqは論外だったということです。)

規制の趣旨目的や法令のレベル(法律>政令>省令)に応じてどのような判断や行動をするべきかは変わります。じっくり時間とリソースを割いて制度を変えに行くという王道もあるわけですが、極端なハナシ例えば規制目的が業界の既得権を守るような規制であったり、完全に時代遅れで一般人に何ら便益をもたらさないものであれば、安易におすすめできることではないですがあえて法律違反のリスクをとりにいくというのも、コストとスピードが命のベンチャーにとっては一つの選択肢としてあり得るとは思います。

日本人的にはなじみにくいですが、社会的に害をなす可能性が低いのであれば法的リスクが有るか否かで思考停止するのではなく、実際に当局に訴えられ裁判に負けて罰を受ける可能性×事業ダメージのリスクと、一方で世の中にイノベーションを実例として見せることでビジネスの理解度や実現性を高めることを比べてみて、リスクが受け入れられる程度に低ければ、それこそまさに「グレーゾーンにチャレンジする」というビジネス判断をすることもありだと個人的には思っています。

実際、アメリカなどは事後規制型(=実際に問題が起こった時に裁判で白黒つける)の法律文化であることもあって上記のようなベンチャーの行動姿勢はよく見受けられますし、日本においてもかつてヤマト運輸が宅配便事業を拡大する際に行政との訴訟を辞さない姿勢で規制を崩したことは近しい事例として参考になるかと思います。

(自民党の福田峰之議員がかつて「グレーゾーンならやっちゃえばいい」という趣旨の発言をして批判されたこともありますがその真意はここで書いていることと同じだと思いますし、個人的にも正しい認識とやり方で「グレーゾーン」に挑戦するまっとうでやんちゃなベンチャーがもっと出てくる方が日本社会にとっても望ましいと思っています。)

 
とはいえ何でもかんでも法的リスクをおかせばよいということでもなく、自分たちの考えるビジネスが一体どのような法律・制度に関係しており、その中の個別の条項がどのような意図をもって何を規制しようとしているのか、そしてそれを所管する当局を特定して話が通じるレベルの前提知識をもって的確に確認・相談した上で、最終的にグレーゾーンに挑戦したり当局と対峙して法令を変えに行くという判断をとるべきだと思いますが、ベンチャーのみならず新規ビジネスを行おうとする大企業にとっても、こうした判断やサポートをできる人材というのはなかなかいないのが現状です。

そんなわけで、前々から準備はしていたのですが、今回の「ベンチャーとグレーゾーン」をめぐる危なっかしい状況を目にしてあらためて意を強くし、政策に知見のある人材とビジネスをつなぐ"Revolve(リボルブ)"というサービスを昨年末に立ち上げました。 
https://www.revolvejp.com

霞が関や永田町で政策プロセスに知見のある国家公務員や議員秘書などの「政策人材」が民間企業などに出ていき、将来的にまた政治や行政の世界にもどってくるアメリカのリボルビングドアのようなエコシステムをつくれればと思い、サービス名称をRevolveとしています。

立ち上げたばかりで正直まだまだまだ登録も全然少ないわけですが、霞が関・永田町界隈をはじめとする政策人材とイノベーティブなビジネスを志す企業や団体に少しずつでも認識いただき、現状ニッチなこの政策関係領域でのビジネスを広げていければと考えておりますし、できる範囲で個別にベンチャーの相談などにも乗れればと思っておりますので、もし周囲に関係・関心ある方がいらっしゃれば、ぜひRevolveをご紹介くださいませ。 (PR)

というわけで本年もよろしくお願いいたします。