最近、会社をやめてプラプラする日々ですが、ストレスフリーなためかなかなかゴゴログを書くほどの引っかかりがある出来事がありません。そんななか、久々にいいネタに巡りあいました。

「データえっせい: 少子化の要因の2局面」

 https://newspicks.com/news/668652/

Newspickで一時総合トップにランキングしていたこの記事、少子化の要因を有配偶者の出生率変化と未婚化の2つに分けて分析しており、以前のゴゴログ記事(「少子化対策・「第三子以降に特化」は裏をかえせば正しい。」)と同じような視点で、結論として、未婚化(非婚化)が大きな問題である、としています。

ま、その結論はいいんですけど、驚いたのは、下記のような分析で「有配偶女性の出生率は向上している」という説明がなされていたことです。

※以下、ブログ元より転載

少子化①


 

























・・・おいおい、マジかよ?結婚している女性の出生率がスンゲエうなぎのぼりなんですけど。。ありえねーだろ。しかし、コメント欄には「分かりやすい!」などの賛辞にあふれており、この分析結果に疑義をはさむ者なし。まさに大惨事! 

一応、この分析がオカシイことをコメントしておいたわけですが、like(いいね、みたいなもんです)をつけた人は2名のみ。。あとから投げられた人気女性pickerの意味不明コメントにたくさんlikeがついているのを見るにつけ、世の中そんなもんだよね、とマイナーな身分の悲哀を味わったわけです。。w 

ま、そんなどうでもいいグチはさておき、 おそらく「知的水準の高さを自負していると思われるNP民」であっても、こんな分析にダマされるんだなと薄ら寒い気持ちになりました。上記のグラフは「インフォグラフ」というほどのものでもない普通の折れ線グラフですが、「一見の分かりやすさ」というのは、便利さと危険性が同居していることを思い知らされたわけです。 

というわけで、マイナーさを味わった恨みを晴らすべく(笑)、上記分析のどこがオカシイのか、きっちり検証することで統計的なリテラシーを身に付けることの重要性を訴えてやろうじゃないの、というのが今更ながら今回の趣旨です。 



さて、上記の折れ線グラフは、元ブログによると、下記のようなソース&計算によってつくられております。 

「2010年の間に,25~29歳の母親から生まれた子どもの数は30万6,910人です(厚労省『人口動態統計』)。『国勢調査』から分かる,同年10月時点の20代後半の有配偶女性は130万3,214人。よって,25~29歳の有配偶女性ベースの出生率は23.6%となります。100人の有配偶の母親から,24人の子どもが生まれた,ということです。  」 

もうこれだけでアウトですよ。分かります?分からない人は中学校で「場合分け」からやり直してくださいねw。 

分子の約30万人というのは、25~29歳の母親から生まれた子どもの総数ですが、その母親というのはダンナがいる女性ばかりではなく、未婚の母や離婚して出産した母親もいるわけです。それを超ザックリと有配偶女性の数で割っちゃってます。なんでこのオカシサに気付かないんですかね、NP民の人々。。 

さて、これだけで、なぜ上記のグラフが右肩上がりになっているのか、ある程度推測がつきますね。婚外子や出産後の結婚(デキ婚ならぬデタ婚か)、あるいは年齢階層内での離婚が増えれば、「生まれた子どもの数÷有配偶女性」の数値は大きくなります。 



というわけで、実際のところどうなのか、統計の元データにあたってみました。(ヒマ人w) 

図1http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/kakutei10/xls/hyo.xls (人口動態統計)
「統計表-第4表」より、筆者作成。
 

図2http://www.e-stat.go.jp/SG1/estat/List.do?bid=000001007702&cycode=0 (国勢調査)
表番号4 「配偶関係(4区分),年齢(5歳階級),男女別15歳以上人口-全国(大正9年~平成22年)」より、筆者作成。
 

以上の2つが、元ブログの折れ線と同じソースのデータです。(とってる期間の長さは違いますが。) 

このデータから、いくつかの推測が可能です。まず、20代前半ですが、この層が母親の出生数は1995年-2010年比で約57%になっていますが、有配偶者数は同じく約48%になっています。つまり、出生数の減少よりも、結婚している女性の減少の方が大きいことが分かります。 

これを、20代前半で結婚した女性のうちで子どもを産む割合が増えたと考える(この場合1995年よりも20%多くの女性が出産している計算になる)よりは、未婚の母や出産後の結婚が増えていると考える方が自然でしょう。 

さらに、30代前半、30代後半でそれぞれまた面白い現象が見られます。まず30代前半ですが、出生時数は1995年-2010年比でほぼ同じ~微増ですが、有配偶者数は2010年では大きく減少しています。1985年との比較では、このかい離はより大きくなっています。 

ここから読み取れるのは、この年代の母親から生まれる子どもは安定的に一定数いるが、他方でおそらくこの年代での離婚が増えていると思われることです。これは国政調査の元データを見て頂ければわかりますが、実際に同年代での離別者比率は、1985年3.0%、1995年に3.4%に対し、2010年では4.5%にまで上昇しています。 

そして顕著なのが30代後半で、1995年~2010年で有配偶者数は約32万人前後と大きく変わらないのに対し、その年代の母から生まれている子供は約10万人から約22万人と、倍以上の増加をしています。そしてここでもう一つ、出生数の総数と女性の有配偶者数の総数を見比べると、その数も比率もそう大きく変わっていません。 

図4
上記の2つの表より算出 

つまり、全体を総じて見れば、(このデータからでは正確には分からないものの)有配偶女性の出生率はトータルでは大きくかわっておらず、かつ出産年齢は高くなっていることが分かります。これは昨今の常識に照らしても納得できる傾向です。 

これを各年代に輪切りにして、かつ間違った計算をして経年変化を見ているので、婚外子または「デタ婚」、離婚の増加といった要因を見逃して、有配偶女性の「出生率」(正確な表現ではないのは言わずもがな)が上がっているような間違った結論にいたっているワケです。 


ここまで執拗な分析をすることは普段必要ありませんが、「有配偶女性の出生率があがっている」という説明への違和感を感じる力と、分析方法のオカシサ(上記で言うところの「場合分け」ができていないこと)を見抜くことができれば、「これな何か変だぞ」と、こんなトンデモな「インフォグラフ」にダマされることはありません。 

そしてできれば、グラフだけを見てよしとするのではなく、少なくともオカシサを感じたら元データにあたることを心がけるようにしてくださいね。これから見た目分かりやすいインフォグラフィックスがどんどん使われるようになると思いますが、だからこそ、数字/統計へのリテラシーがますます重要になると感じた出来事でした。 

あー疲れた。。