来年4月の消費税増税、やっと正式決定されましたね。最後の最後まで悩んで決めた、という体をとったようですが、4月の増税は盆明けくらいからは規定路線で、むしろ、政治的攻防は、法人税減税にとっくに移っていたとみるのが妥当な見方だと思われます。

昨日アップした麻生大臣の記者会見録をみても、法人税減税に関するやりとりに関する緊張感というか、麻生さんの歯切れの悪さが高まっていく様子がうかがえます。法人税減税に関しては、復興増税の前倒し廃止や実効税率の低減など、いろんな方向性が取りざたされていますが、一般論として、麻生大臣もバックの財務省もあまりスジがいいとは思っていないと感じ取ることができますし、ゴゴ個人としても、麻生さんが夏前から一貫して記者会見で話していたことは、概ねまっとうな話だと思っています。

また、政策論も経営の現場もよくわかっている周囲の知人たちはいずれも、現状語られている法人税減税の方向性(ベンチャーや「先進的な」設備投資に対する減税や、給与支払い増加の場合の減税)が経済成長につながるとの政策的実効性については懐疑的です。

※ちなみに、ゴゴは法人税減税が全て無意味、とは思っていません。ちょっと振れた話ですが、海外からの直接投資(FDI)に限って呼び水的に減税を認めるのであれば、既存税収を毀損することなく追加投資を期待することが可能です。ま、それはそれで議論を呼んでしまうでしょうが、いずれにせよ、ロクなグローバル戦略もなければ、そもそも納税してもいないような企業を対象に、海外とのイコールフッティングでの法人減税なぞ、猫に小判な話でしょう。


さてさて、にも関わらず、なぜ「ナンセンスな」法人税減税についてが議論の対象になっているのか?これはもはや、経済的なスジ論を超えた、政治的レトリックの戦いになっているのではないかとゴゴは推測します。冒頭紹介の麻生大臣記者会見録によると、8月10日の安倍総理との会談の中で、「政策パッケージ」について話題に上ったとの話しがあります。

この「政策パッケージ」とは、アベノミクスの三本の矢のうちの三本目、経済成長路線へと日本を導く政策群のことであり、消費税増税による経済へのマイナスインパクトが予想される中、これを補ってさらにプラスアルファとなるような経済政策のこと指します。

しかしながら、日銀の「異次元」金融緩和に始まったアベノミクスも、いざ本丸の経済政策の中身に関しては内外からの評価が芳しくなく、「解雇特区」やら、亜流のネタばかりで目玉がない状況のようです。こうした中で、消費税増税だけでは景気が冷え込んでしまい、総理-自民党の政治責任につながる、ここは企業活動の活性化が必要なのでぜひ法人税減税を、ということを某K団連あたりや某K産省あたりのひとが吹きこんで、安倍総理としては、他にすがるものがない中で焦って指示を出しているのではないか、というのがゴゴ個人の超憶測です。

(消費税増税による景気影響には万全の用意をしていますよ、というためのネタ・セリフを作れるかどうかがイシューになっているんじゃないの?ということです。ここに至れば、これまでの成長戦略と同じく、全体的実効性はなくてもまとめた役人勝ち、うまく乗っかった企業勝ちです。)

というワケで、こういうスジ悪な税制パッケージが三本の矢の目玉の一つとして残るのか、それとももっとまっとうな別の経済政策が打ち出されるのか、法人税減税をまつわる議論は、安倍総理の資質と日本経済の先行きを占う大きな試金石になるような気がします。

なお、豆知識ですが、税制については、自民党税調、その中でも隠然たる影響力を持つ「インナー」と呼ばれる一部議員での議論でほぼ年内に決着がつくクローズドで特殊な世界になっています。(ここでの結論が、そのまま税制改正法案として国会提出され、議決される流れ)なので、年末、自民党税調において法人税減税についてどんな方針が打ち出されるのか、要チェックですよ!


(蛇足のヨタ話)

ちなみに、安倍総理の資質については、あくまで直感ながら、ゴゴ個人的にはややネガティブな予想をしています。多分、純粋にいい人・真面目な人だけど、リーダーかくあるベしといった家系的な影響か、難しい判断を自分の責任で決めるというスタイルにとらわれて、結果的にスジのつながらない決断を一人でしてしまう傾向があるような気がしています。これまでのところ、前政権の時の経験でそこは慎重になっていると思いますが、やっぱりどこかで出てくるんじゃないかと。。。うまく麻生さんと二人三脚で安定的にやれればいいのですけどね。ま、単なる外野のヨタ話です。

(12月4日補足)
自民党税調で、法人税引き下げは中長期課題として見送りとなったようです。妥当な判断でしょうね。

ちなみに安倍総理についてですが、この記事の後に菅官房長官のお話を聞く機会があり、菅さんの非常に高いバランス感覚を伺い知るとともに、総理とタッグを組んで政策方針を決めているとの話だったので、ゴゴの勝手な憶測はどうあれ、ソツなく政権運営をこなしていくだろうとの安心感を今は持っています。というわけで、上記ヨタ話での不安定感についてはひとまず訂正です。