前回、労働者派遣法の改正について触れたので、今回はついでに、もう少しこの件について掘り下げてみます。

今回の改正では、派遣会社ごとに、「マージン率」の開示が義務付けられました。
クローズアップ 知っておきたい改正労働者派遣法のポイント

これはなかなか面白い打ち手です。派遣会社というと、ピンハネしてるとよく批判されるワケですが、ピンハネを禁止するとか、マージン率を一定以下に抑えよとか、前回お伝えしたような、いかにも法律的な善悪論での打ち手ではなく、「いくらマージン取ってようが構わないけど、それは世の中にオープンにしてね」とだけ決めてるところが、なかなか面白いゲームになっています。

派遣会社としては、当然マージンを高く取りたいわけですが、これがオープンとなれば、あまり高く取ってると、労働者や企業から利用を避けられたり、世の中から非難されるリスクが高まるわけで、各社横を見ながら、適切な均衡点を探すゲームとして成り立っています。

ちなみにこのアイディア、ゴゴが厚労省に出向している時に、基本的に同じことを考えて、派遣法の所管課である需給調整課に、やはり財務省から出向で来ていた同僚を通じて打ち込んだことがあります。もう10年近くも前の話しなので、今回の改正にその話がつながっているとは思えませんが、やっと一歩進んだな、と妙な感慨があります。

ちなみち、ゴゴが伝えたアイディアは、派遣料金を、本人への支払い賃金と、その他を「派遣サービス料」とに区分して、使用する会社、派遣労働者本人の双方にその明細を示すよう義務つけること、でした。

つまり、今回のような会社単位ではなく、個々の月々の支払い単位で、今回で言マージン率を示させるというものです。この方が、より強力に、使用者・労働者の派遣会社選択を促します。

おそらく、今回の改正の延長で、将来こうした法制の導入が見据えられているのではないかと、ゴゴは推測します。

その上で、派遣会社を経営している方へのアドバイスですが、法制化される前に、こうした個別の開示に取り組むことをオススメします。ひとつには、適切なマージン率と、その内容を積極的に示していくことで、他の派遣会社よりも優良な会社であるというブランド戦略につなげていけると考えるからです。

ブランド戦略と考えれば、マージン率を下げることとは逆に、優良なサービスによって、サービス料を高く維持する競争戦略が描けます。逆に、ここを怠れば、訴求力のない会社として、マージン率の引き下げ競争のなかで、だんだんと経営が厳しくなっていく可能性があります。

加えて、積極的に個別開示のあり方を考えて率先すれば、それがいつか来るであろう法制度のモデルになり、その場合は、経営の現実に合わない規制がかけられるリスクを減らせます。逆に、どの会社も取り組まなければ、役所主導で、非常に使い勝手の悪い非現実的な法制度になるかもしれません。

ちなみに、ドラッカー教授は、倫理に反した経営は、いつか過剰な規制によって反撃を受ける、その時になって反論してもすでに遅く、つまりは倫理的でないビジネスは、サステナブルではあり得ない、といった趣旨の教えを説かれていたと記憶しています。

派遣会社が、例えば積極的な教育投資などに取り組み、派遣労働のあり方の改善に取り組み続ければ、今よりはもっと派遣労働というものの評価は上がっていくかもしれませんね。

最後に、ほんとオマケ話しですが、いつも話題に出ては消えていくジョブカード、正規雇用の促進のためでなく、派遣労働者のスキル証明として、派遣会社間でポータブルなものとして活用を考えれば、キチンと効果を発揮すると思いますよ。